作品情報
江戸川乱歩の同タイトル短編小説”芋虫“をグロテスクでエロティックな漫画表現の極限に向けて、丸尾末広が描いた作品。
ストーリーは丸尾氏が考えたのではなく、江戸川乱歩の小説が元だったんだね。にしてもこの組み合わせは嫌な予感…(嬉)
・主な登場人物
・須永中尉
両手足を失った芋虫状態で戦争から帰国。
耳は聞こえず、話すこともできない。
(一応戦って帰ってきた国の英雄なので)建前上は周りは尊敬の念を向けてくれるが本当は気味悪がっている。
・須永時子(すなが ときこ)
須永中尉の妻。主人公。
悲惨な姿になってしまった夫をつきっきりで世話するが、だんだんと弄ぶようになってしまうとんでもない嫁。怖い。
・鷲尾
隙を見ては時子の尻を目で追う。須永中尉の元上司。
・あらすじ(ネタバレ注意)
「これが戦死よりマシ?」
時子の夫:須永中尉は戦争で両手足、聴覚、声を失った。
身内は気味悪がり、少しの金を置いて世話を時子にすべて押し付けて帰っていってしまう。
つきっきりですべての世話をしなくてはいけない時子。
会話をしたい時は口に鉛筆をもって筆談させ、食事は一口ずつ口へ運んでやり、排せつは尿瓶へ。不満な時は自分の体を床へ叩きつけてその感情を表す。
さらに体までも求めてくる夫は、まるで動物のようであった。
だが芋虫のような夫との変態的な性生活に時子は快楽を覚え始め、徐々に恐ろしい嗜虐心をも高ぶらせていく。
「あなたは私がいなければ何もできないのよ」
何をされても芋虫のように無抵抗な夫をみるうちに時子の嗜虐心はさらに高まり、いつしか悪夢にもうなされるように。
ある日時子はあまりにも純粋に感情を伝えてくる夫の眼を恐れ、自らの指で潰してしまう。
自分の行動を悔いて泣きながら謝る時子は目に包帯が巻かれて横たわる夫の体に指で文字を綴る。
「ゆるして」
時子が少し外出する間に家を抜け出した夫は、その芋虫のような体を引きずりながら古井戸の方へ向かっていくのであった。
感想や見どころ
・「…。」な怖さ
・ゾゾゾな作画
・こんな作品を読む自分への背徳感
・「…。」な怖さが最高
丸尾作品を読むのは2回目なのですが、今作ももちろん怖かったです。
しかも怖いのベクトルが「うわー!やべー!」とかではないんですよね。「…。」なんですよ。それがまた最高でした。
読んでる最中、読んだ後に沸き起こる「…。」の感情はこのストーリーとこの絵の組み合わせじゃないとなかなかお目にかかれるものではありません。
読んで数日経ってからもぬるぬるのなめくじが背中を通りすぎた後のようないや~な感じがずっと残ります。
読み終わった後この漫画を家に置いとくのがなんだか不安になりましたよ。
・とにかくゾゾゾな作画
以前読んだ”少女椿”も良かったですが、この”芋虫”のストーリーにも彼の絵がマッチしていてよかったと思います。
とにかく気持ち悪いのがいい!(褒めてます)
例えば体。
体毛とか目の中の血管とかまでかなり細かく描いていらっしゃいますし、おじさんが裸になった時の少し腹が出ている感じもとかもいい具合に気持ち悪いです。
作中では特に須永中尉(夫)の裸体がたくさん見れますのでぜひ注目してみてください。
あとは時子が見る”悪夢“の描写がとても良いです。
どろどろした何かやら、意味の分からん生物やらに囲まれるような悪夢の中の悪夢。
“得体の知れない悪夢”の得体が知れなさすぎる。コワい。
ということで丸尾氏のこの独特の絵にも注目です。
ただ、ごはん中はやめた方がいいです。(笑)
いつもの癖でご飯食べながら読もうとしましたが、1ページ目見た瞬間さすがに無理だなってなってしまいました。
・こんな作品を読む自分への背徳感
この作品の3つめの楽しい点は、”こんな気持ち悪い漫画に金を払って読んでいる自分“という背徳感を味わえることです。
四肢のない芋虫人間とその嫁が”エッ!”したりする漫画どう考えても普通ではありません。
でもそれがいいのです。友人や家族には絶対教えられないようなショッキングな漫画を、一人でこそこそ読むのめちゃくちゃ楽しいです。
違法でもなんでもありませんので!(笑)
見てはいけないものを見るような、見たくないのに見てしまうような、そんな背徳感を味わいたい人にはかなりおすすめです!
最後に
今回は衝撃の漫画、芋虫についてでした。
同漫画家作品の”少女椿”や、芋虫をモチーフに作られた映画”キャタピラー”もなかなかショッキングなので、興味がある方はぜひチェックしてみてください!